この文章は文章作成アドバイスツール「文賢」で
チェックし、作成しました。
文賢マガジン編集部の森です。
今回は「さ入れ言葉」について取り上げます。
さて、あなたは以下の表現について、違和感を覚える点はありませんか。
- 「書類を後輩に届けに行かさせます」
- 「そのイスに座らさせてください」
- 「今日は休まさせていただけますか」
これらは、不要な「さ」が入った「さ入れ言葉」といい、文法的に正しくない日本語です。
この記事では「さ入れ言葉」を防ぐ簡単な方法と「さ入れ言葉」になってしまう原因を解説していきます。
1.「さ入れ言葉」の例
「さ入れ言葉」とは、不要な「さ」が入り、文法的に正しくない表現のことです。
たとえば、以下のような表現が「さ入れ言葉」で、赤文字の「さ」は文法上不要です。
- × 歩かさせる → ○ 歩かせる
- × 行かさせる → ○ 行かせる
- × 書かさせる → ○ 書かせる
以下のような「させてもらう」「させてください」「させていただく」を用いた表現も、正しく使わないと「さ入れ言葉」になってしまう場合があります。
- × 座らさせてもらう → ○ 座らせてもらう
- × 歌わさせてください → ○ 歌わせてください
- × 休まさせていただく → ○ 休ませていただく
「~させてもらう」などの表現はよく使うので、気づかないうちに「さ入れ言葉」になっているかもしれません。
誤った言葉遣いをしないように「さ入れ言葉」を防ぐ簡単な方法を紹介しますね。
2.「さ入れ言葉」を防ぐ簡単な方法
「~させる」「~させてもらう」などの表現では、不要な「さ」が入ってしまいやすいです。
「さ入れ言葉」を防ぐ簡単な方法は、以下の手順で動詞を分解して「せる/させる」を使い分けることです。
動詞の「書く」を例に用いて解説します。
手順1.まず、動詞を否定の形(~ない)にする
書く → 書かない
手順2.次に、「~ない」の一文字前の「母音」を確認する
書か(ka)ない
この場合、母音は「a(あ)」です(母音とは、a・i・u・e・oの5つを指します)。
手順3.母音が「a」か「それ以外」かによって、「せる」か「させる」かが決まる
- A.母音が「a」の場合は「せる」を使う
- B.母音が「a」以外の「i・u・e・o」の場合は「させる」を使う
手順4.以上を踏まえると、「書く」はAグループとなり、「せる」を使うのが正しい
【OK】書かせる
【NG】書かさせる
簡単な覚え方として、一文字前の母音が「a(あ)」のときは「せる」。
「ない」に変換することとあわせて、「ないとaseru(焦る)」と覚えておくとよいでしょう。
なお、上記手順3のBグループ(一文字前の母音が「a」以外)の動詞は「させる」を使うので、「さ」が入ることは正しいです。
「さ」が入ることが正しい例
- 居る → 居(i)ない → 居させる
- 受ける → 受け(ke)ける → 受けさせる
- 来る → 来(ko)ない → 来させる
なぜ「~ない」の一文字前を確認するだけで判断できるのでしょうか。
実は、「さ入れ言葉」は「動詞の活用の種類」と深い関係があるんです。
ここまでの内容でも「さ入れ言葉」を防げますが、日本語の文法を知っておくと、言葉をよりうまく扱うことができます。
文章力アップを目指す人はぜひ読み進めてください。
3.「さ入れ言葉」を防ぐための文法理解
「~ない」の一文字前の「母音」に応じて「せる/させる」を使い分けることを説明しました。
「せる」と「させる」はいずれも「使役(しえき)の助動詞」です。
※「使役」とは、文法用語で「ある行為を他者にさせる(おこなわせる)」こと
以下のように、本来は助動詞「せる」を使うべきところで「させる」を使ってしまうことによって、不要な「さ」が入ってしまいます。
助動詞「せる/させる」を混同しないためには、「動詞の活用の種類」を見分けたうえで、助動詞を正しく使い分ける必要があります。
「動詞の活用の種類」に応じて、助動詞「せる」「させる」を使い分ける
以下のように、「動詞の活用の種類」に応じて、助動詞を使い分けます。
- 1.五段活用動詞(※):「せる」を使う
- 2.その他の活用動詞:「させる」を使う
※正確には「サ行変格活用動詞」も1のグループですが、サ行変格活用動詞の主な動詞は「する」のみなので、ここでは省略しています
1.「五段活用動詞」には助動詞「せる」を使う
「五段活用動詞」とは、動詞の活用語尾(※)が五十音図の「あいうえお」の五つの段にわたって変化する動詞です。
※「活用語尾」とは、動詞末尾の変化する部分のこと
たとえば、動詞「書く(かく)」は以下の表のように、活用語尾が「かきくけこ」になります。
活用語尾が五段にわたるので、「歩く(あるく)」は五段活用動詞です。
活用形 | 活用表現 |
---|---|
未然形 | 書か(ない)、書こ(う) |
連用形 | 書き(ます) |
終止形 | 書く |
連体形 | 書く(とき) |
仮定形 | 書け(ば) |
命令形 | 書け |
五段活用動詞には助動詞「せる」を使うので、「歩く」+「せる」=「歩かせる」が正しいです。
●「さ入れ言葉」を防ぐ簡単な方法と「五段活用動詞」の関係
使役の助動詞「せる/させる」は「動詞の未然形」に付けます。
「五段活用動詞」の未然形(~ない)の活用語尾は「あ段」になるので、母音は「a」です。
そのため、「さ入れ言葉」を防ぐ簡単な方法で紹介したルールでは、「動詞の活用の種類」がわからなくても、否定の形(~ない)の一文字前を確認するだけで、助動詞「せる」を使えばいいと判断できたのです。
2.「その他の活用動詞」には助動詞「させる」を使う
つづいて、動詞「受ける(うける)」を例に見ていきましょう。
活用語尾が五段にわたらないので、「受ける(うける)」は五段活用動詞ではありません。
活用形 | 活用表現 |
---|---|
未然形 | 受け(ない) |
連用形 | 受け(ます) |
終止形 | 受ける |
連体形 | 受ける(とき) |
仮定形 | 受けれ(ば) |
命令形 | 受けろ |
五段活用動詞以外には助動詞「させる」を使うので、「受け」+「させる」=「受けさせる」が正しいです。
「さ」が入ることは文法的に正しいので、「受けさせる」は「さ入れ言葉」ではありません。
まとめ:「さ入れ言葉」に気をつけよう
「~させる」「~させてもらう」などの使役表現では、不要な「さ」が入ってしまいやすいので気をつけましょう。
「さ」が入ることが「誤りな場合」と「正しい場合」をすぐに区別できるよう、ルールのおさらいです。
- 「~させる」「~させてもらう」などの使役表現で「さ入れ言葉」が発生しやすい
- 動詞を「~ない」の形にして、「ない」の一文字前の母音が「a」の場合は「せる」を使う(「さ」は不要)
それでは最後に復習しましょう。
動詞の「読む」と「教える」を使役表現にするとき、それぞれ「せる/させる」のどちらを使うでしょうか?
- 動詞「読む」の使役表現は?(クリックすると答えを確認できます)
- 「読ませる」が正しいです。
「読む」の否定の形は「読ま(ma)ない」です。
「ない」の一文字前の母音が「a」なので、助動詞「せる」を使います。
- 動詞「教える」の使役表現は?(クリックすると答えを確認できます)
- 「教えさせる」が正しいです。
「教える」の否定の形は「教え(e)ない」です。
「ない」の一文字前の母音が「a」ではないので、助動詞「させる」を使います。
文賢マガジンでは、これからも文章作成に関するコンテンツを発信していきます。
次回以降の記事もお楽しみに。
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チェックの例
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