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こんにちは、文賢マガジン編集部です。
この記事では、ビジネスパーソンの必須スキルである「敬語」の使い分けについて取り上げます。
敬語には以下の3種類があり、伝える相手との関係性や状況によって、使うべき種類が異なります。
- 尊敬語:相手や第三者を立てる敬語
- 謙譲語:自分がへりくだることで相手への敬意を表す敬語
- 丁寧語:聞き手・読み手へ丁寧に伝える敬語
丁寧語は主に、語尾が「~です・~ます」の一般的な表現なので、日常会話でもよく使っているのではないでしょうか。
しかし、尊敬語と謙譲語は、その違いや使い分けが難しいものです。
そこで、ビジネスシーンで正しく敬語を使用できているか、まずはクイズで確認してみましょう。
以下の5つのシーンついて、それぞれ、1と2のどちらが正しいと思いますか?
【クイズ1】取引先やお客さまに対して敬語を使う場合、1と2のどちらが正しいでしょうか?
- 温かいうちにいただいてください。
- 温かいうちに召し上がってください。
【クイズ2】お客さまに対して敬語を使う場合、1と2のどちらが正しいでしょうか?
- 弊社の担当者にはお会いになりましたか?
- 弊社の担当者にはお目にかかりましたか?
【クイズ3】お客さまに対して敬語を使う場合、1と2のどちらが正しいでしょうか?
- お手元の資料をご覧になってください。
- お手元の資料を拝見してください。
【クイズ4】上司に対して敬語を使う場合、1と2のどちらが正しいでしょうか?
- A社の件、社長から伺っていますか?
- A社の件、社長からお聞きになっていますか?
【クイズ5】取引先に対して敬語を使う場合、1と2のどちらが正しいでしょうか?
- 部長の田中が、そのようにおっしゃっていました。
- 部長の田中が、そのように申していました。
※このクイズの正解は【クイズ解説】使い分けが難しい尊敬語と謙譲語の違いを理解しようの章で解説しています。
このようなシーンで適切な回答をするためには、敬語を正しく使い分ける必要があります。
普段なにげなく使っている「敬語」は、実はとても奥が深いものです。
この記事では、人とのコミュニケーションを円滑に進めたいビジネスパーソンに向けて、敬語を使ううえで知っておきたい基礎知識とポイントをお伝えします。
1.3種類の敬語表現「尊敬語・謙譲語・丁寧語」を知ろう
敬語には、大きく3つの種類(小分類で5種類)があります。
1.尊敬語
ある人物を自分よりも高く位置付けることにより、対象の人物への敬意を表す
【例】いらっしゃる・おっしゃる
2.謙譲語
(1)謙譲語Ⅰ:自らへりくだることで、動作が向かう先の人物への敬意を表す
【例】伺う・申し上げる
(2)謙譲語Ⅱ:自らへりくだることで、読み手・聞き手への敬意を表す
【例】参る・申す
3.丁寧語
(1)丁寧語:相手に対して丁寧に述べる
【例】です・ます
(2)美化語:ものごとを美化して述べる
【例】お酒・お料理
以下の表は、上記の内容をまとめたものです。
参考:文化庁「敬語の指針」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf
敬語の分類とそれぞれの役割を理解することで、相手への配慮が伝わりやすくなり、ものごとをスムーズに進める潤滑油になりますよ。
それでは、3種類の敬語について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.尊敬語:相手や第三者を立てる敬語
尊敬語は、自分よりも相手を高く位置付けることで相手を立てる敬語です。
代表例に「いらっしゃる」「おっしゃる」などがあります。
ほかにも、ビジネスシーンでよく使う尊敬語には、以下のような表現があります。
【尊敬語の例】
いらっしゃる、おっしゃる、なさる
お越しになる、ご覧になる、好まれる
帰られる、ご参加、お見送り など
「忙しい」→「お忙しい」のように、「お」や「ご」付けることでも尊敬語へ変化させられます。
「お」や「ご」がなじまない言葉の場合には、「博識でいらっしゃる」「背が高くていらっしゃる」のように、「~でいらっしゃる」「~くていらっしゃる」を付け加えることで尊敬語にできます。
それでは、尊敬語を使った場合の言葉づかいの変化を見てみましょう。
営業担当者のAさんが、取引先企業に訪問してCさんの在席を確認するシーン。
Aさんと、受付担当者Bさんの会話です。
【Before】
Aさん:「Cさんはいますか?」
Bさん:「いいえ、Cは席を外しております」
Aさん:「いつごろ戻りますか?」
Bさん:「17時ごろに戻ります」
Aさん:「忙しいようなので、また明日出直します」
【After】尊敬語を使用
Aさん:「Cさんはいらっしゃいますか?」
Bさん:「いいえ、Cは席を外しております」
Aさん:「いつごろ戻られますか?」
Bさん:「17時ごろに戻ります」
Aさん:「お忙しいようなので、また明日出直します」
上記の2つの会話を見比べてみたときに、尊敬語を使っている後者のほうが丁寧な印象であり、相手を敬う気持ちを表せます。
2.謙譲語:自分がへりくだることで相手への敬意を表す敬語
謙譲語は、自らを低く位置付けることで相手を立てる敬語です。
代表例に「伺う」「参る」「申す」などがあります。
また、謙譲語には小分類があり、「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ(丁重語)」の2つに分けられます。
謙譲語Ⅰ:誰かへの行為やものごとについて、向かう先の人物を立てる
謙譲語Ⅰは、相手または第三者への行為やものごとについて、自分を低く位置付けることで、その動作が向かう先の人物を立てます。
代表的なものには「伺う」「申し上げる」などがあります。
ポイントは、動作が向かう先を立てることです。
そのため、以下のように、動作の向かう先である実家を「立てる」使い方は不適切です。
【NG】母の見舞いのため、実家に伺います。
謙譲語Ⅱ(丁重語):自分側の行為やものごとを聞き手・読み手に丁重に述べる
謙譲語Ⅱ(丁重語)は、自分側の行為やものごとを丁重に伝えることで敬意を示します。
代表的なものには「参る」「申す」などがあります。
ポイントは、聞き手に対して丁重に述べることです。
以下の「実家に参る」の表現も、直接的に実家を立てているわけではないため、問題なく使えます。
【OK】母の見舞いのため、実家に参ります。
3.丁寧語:聞き手・読み手へ丁寧に伝える
丁寧語は、会話や文章において、相手へ丁寧に述べる敬語です。
具体的には、以下の2種類があります。
- 「~です・~ます」を付けて丁寧に述べる「丁寧語」
- 「お・ご」を付けてものごとを美化する「美化語」
丁寧語は、会話の相手や文章を読む相手へ「丁寧に伝えること」を目的としています。
尊敬語・謙譲語との大きな違いは、相手と自分の位置関係を表す意図がないことです。
それでは、丁寧語と美化語について詳しく見ていきましょう。
丁寧語:相手に対して丁寧に述べる
丁寧語は、「~です」「~ます」など、聞き手や読み手に対して丁寧に事柄を述べる際に使われます。
尊敬語・謙譲語との比較は以下のとおりです。
●尊敬語・謙譲語との比較(例:伝える)
【尊敬語】部長が(社長に)お伝えになります。
【謙譲語】(私が)部長に申し伝えます。
【丁寧語】(私が)部長に伝えます。
丁寧語は、尊敬語や謙譲語に比べて、敬意の度合いはやや低くなります。
しかし、ビジネスシーンにおいても丁寧語は失礼ではなく、相手との関係性を問わずに使えるのがポイントです。
美化語:ものごとを美化して述べる
美化語は、名詞や動詞に「お」または「ご」を付け、ものごとを「美化」して伝える敬語です。
相手の存在に関係なく、丁寧に伝えることが目的です。
【美化語の例】
「お」が付く美化語:お花、お酒、お寿司、お料理(をする)
「ご」が付く美化語:ご飯、ご挨拶、ご祝儀
2.【クイズ解説】使い分けが難しい尊敬語と謙譲語の違いを理解しよう
ここまで、3種類の敬語表現「尊敬語・謙譲語・丁寧語」の違いを紹介しました。
ここからは、冒頭で紹介した5つのクイズの答え合わせをしながら、とくに使い分けが難しい「尊敬語」と「謙譲語」の違いに焦点を当てて解説します。
このシーンで適切な回答をするためには、敬語の「ウチ・ソト」の考え方への理解が必要です。
「ウチ」は身内、「ソト」は外部の人を意味します。
社外の人に対しては、上司も身内として扱います。
ソトの相手に対してウチの人物を立てると、敬意の対象がずれてしまうので気をつけましょう。
【クイズ1】
召し上がる/いただく
「召し上がる/いただく」は、動詞「食べる」の敬語表現です。
【クイズ1】取引先やお客さまに対して
【NG】温かいうちにいただいてください。
【OK】温かいうちに召し上がってください。
正解:召し上がる
「召し上がる」は尊敬語、「いただく」は謙譲語です。
取引先やお客さまなどの相手を立てるため、尊敬語「召し上がる」が適切です。
【クイズ2】
お会いになる/お目にかかる
「お会いになる/お目にかかる」は、動詞「会う」の敬語表現です。
【クイズ2】お客さまに対して
【NG】弊社の担当者にはお目にかかりましたか?
【OK】弊社の担当者にはお会いになりましたか?
正解:お会いになる
「お会いになる」は尊敬語、「お目にかかる」は謙譲語です。
ここではお客さまを立てるため、尊敬語の「お会いになる」が適切です。
【クイズ3】
ご覧になる/拝見する
「ご覧になる/拝見する」は、動詞「見る」の敬語表現です。
【クイズ3】お客さまに対して
【NG】お手元の資料を拝見してください。
【OK】お手元の資料をご覧になってください。
正解:ご覧になる
「ご覧になる」は尊敬語、「拝見する」は謙譲語です。
ここではお客さまを立てるため、尊敬語の「ご覧になる」が適切です。
【クイズ4】
お聞きになる/伺う
「お聞きになる/伺う」は、動詞「聞く」の敬語表現です。
【クイズ4】上司に対して
【NG】A社の件、社長から伺っていますか?
【OK】A社の件、社長からお聞きになっていますか?
正解:お聞きになる
「お聞きになる」は尊敬語、「伺う」は謙譲語です。
ここでは上司を立てるため、尊敬語の「お聞きになる」が適切です。
【クイズ5】
おっしゃる/申す
「おっしゃる/申す」は、動詞「言う」の敬語表現です。
【クイズ5】取引先に対して
【NG】部長の田中が、そのようにおっしゃっていました。
【OK】部長の田中が、そのように申していました。
正解:申す
「おっしゃる」は尊敬語、「申す」は謙譲語です。
身内の行為について社外の人に述べるときは、謙譲語の「申す」が適切です。
尊敬語の「おっしゃる」を使うと、社外の人に対して身内の田中さんを立てることになってしまいます。
※社外の人に対して上司の役職を伝えるときには注意が必要です。
「社長」「部長」「課長」などの役職名は、敬称のひとつです。
そのため、社外の人に対して「田中部長」と言うと、社外の人に対して身内を立てることになってしまいます。
「部長の田中」と表現することで「ウチ」の関係を示しましょう。
3.ビジネスでよく使う基本の敬語一覧表
最後に、ビジネスシーンでよく使う敬語を以下にまとめています。
ご自身の敬語の使い分けが合っているか、確認したいときの参考にしてみてください。
※横にスクロールできます。
基本形 | 尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 |
---|---|---|---|
行く | いらっしゃる、おいでになる | 伺う、参る | 行きます |
来る | いらっしゃる、お越しになる | 伺う、参る | 来ます |
する | なさる、される | させていただく、いたす | します |
いる | いらっしゃる | おる | います |
知る | ご存知、お知りになる | 存じ上げる、存じる | 知っています |
思う | お思いになる | 存じ上げる、存じる | 思います |
言う | おっしゃる | 申し上げる、申す | 言います |
伝える | お伝えになる | 申し上げる、申し伝える 申す、お伝えする |
伝えます |
見る | ご覧になる | 拝見する | 見ます |
読む | お読みになる | 拝読する | 読みます |
聞く | お聞きになる | 伺う | 聞きます |
尋ねる | お尋ねになる、尋ねられる | 伺う、お尋ねする | 尋ねます |
訪ねる | お訪ねになる、訪ねられる | 伺う | 訪ねます |
会う | お会いになる | お目にかかる | 会います |
持つ | お持ちになる | お持ちする | 持ちます |
座る | おかけになる | 座らせていただく | 座ります |
借りる | お借りになる | 拝借する | 借ります |
食べる | 召し上がる | いただく | 食べます |
あげる | くださる | 差し上げる | あげます |
もらう | くださる | いただく | もらいます |
受け取る | お受け取りになる | 拝受する、頂戴する | 受け取ります |
まとめ
3種類の敬語「尊敬語・謙譲語・丁寧語」の違いと使い分けについて紹介しました。
- 尊敬語:相手や第三者を立てる敬語
- 謙譲語:自分がへりくだることで相手への敬意を表す敬語
- 丁寧語:聞き手・読み手へ丁寧に伝える敬語
敬語を扱ううえで大切なことは、「正しい敬語を使えているか」はもちろんのこと、「相手を尊重する姿勢があるか」や「その時、その状況に合った言葉遣いができているか」といった心持ちの部分です。
リモートワークなどで働き方が多様化し、テキストコミュニケーションが増えた今、お互いの顔が見えない状況では、適切に敬語を使えるスキルがよりいっそう求められます。
この記事で紹介した内容が、敬語力アップの一助になれば幸いです。
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