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こんにちは、文賢マガジン編集部です。
この記事では、敬語表現「させていただく」の使い方を取り上げます。
ビジネスや日常生活でも非常によく使われる「させていただく」の敬語表現。
実は本来、特定の条件のもとでしか使えない言葉なのです。
「させていただく」の使用が適切な場面は、自分の行為について「許可」と「恩恵」を受けるときです。
そのため、「許可」「恩恵」が無関係な場面で使用すると、誤用になります。
不適切な使い方をしてしまうと、相手に不快感を与えたり、「正しい敬語が使えていない」とあなたの評価が下がったりする可能性もあります。
せっかく丁寧な表現を心がけたのに、逆に失礼にあたってしまうとしたらとても残念です。
この記事では「させていただく」が適切に使える2つの条件と、正しい例と誤用例、および、言い換え表現について解説します。
※本記事では主にメールや文書で使う「書き言葉」を前提として解説します。
「話し言葉」は流動的であり、文法的な正しさよりも意思疎通を優先する傾向があるため、本記事の内容が当てはまらない場合があります。
1.敬語表現の「させていただく」が使える2つの条件
「させていただく」「させていただきます」という敬語表現は、自分の行為を相手に伝える際の丁寧な表現として、よく使われています。
文化庁の「敬語の指針」によると、「させていただく」は、以下の2つの条件を満たしたときに使うのが適切とされています。
●「させていただく」が使える2つの条件
- 相手側又は第三者の許可を受けて行う場合
- そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合
上記2つの条件を満たす正しい例文を、3つ紹介します。
まず、打ち合わせ日程の変更依頼メールです。
【適切な例】打ち合わせの変更依頼メール
Aさん:「明日13時の打ち合わせにつきまして、体調不良のため、延期させていただけないでしょうか」
Bさん:「問題ございません。それでは、来週水曜日の13時はいかがでしょうか」
Aさん:「ありがとうございます。来週水曜日の13時に変更させていただきます」
Aさんは、打ち合わせ日の変更について「許可」を取り、明日は治療に専念できるという「恩恵」を受けているので、「させていただく」の正しい使い方だといえます。
つづいて、取引先業者とのメールです。
【適切な例】取引先業者とのメール
自社:「パッケージに使用するロゴの画像をいただけますか」
取引先:「弊社の素材データベースからダウンロードしていただけます。パスワードはxxxです」
自社:「ありがとうございます。大小2点をダウンロードさせていただきます」
自社の担当者は、ロゴ画像をダウンロードする「許可」を得て、素材を使用できるという「恩恵」を受けているので、正しい使い方です。
最後に、コンサート会場の貼り紙の例です。
【適切な例】コンサート会場入り口の貼り紙
入場ゲートにて、カメラやICレコーダーをお持ちではないか、荷物の中身を点検させていただきます。
ここでは、荷物の点検には相手の「許可」が必要であり、それによって主催者側は不正な撮影や録音を防止できるという「恩恵」を受けるので、適切な使い方といえます。
これらの例文のように、2つの条件「許可」「恩恵」を満たしていれば、問題なく「させていただく」を使えます。
しかし最近では、上記の2つの条件に当てはまらないのに「させていただきます」と書いているメールや文書もしばしば見られます。
取引先や上司に対して、不適切な場面で「させていただく」を多用してしまうと、「敬語の使い方がおかしい」と思われるかもしれません。
そういった事態を避けるため、ここからは「させていただく」のよくある誤用例と正しい言い換え方法を確認していきましょう。
2.「させていただく」の言い換えと誤用例
「させていただく」の誤用にあたるケースは、主に以下の2つのいずれか、あるいは両方に当てはまります。
●条件を満たしておらず、誤用にあたるケース
- 相手の許可が必要ではないのに「させていただく」を使ってしまうケース
- 自分が恩恵を受ける場面ではないのに「させていただく」を使ってしまうケース
「丁寧な文章を書かなくては」と思うあまり、なんにでも「させていただきます」を使ってしまっていないでしょうか。
そのような場合は、次のように言い換えましょう。
「させていただく」は「いたします」「です」に言い換えられる
「させていただく」の使用が適切な2つの条件「許可」「恩恵」に当てはまらないときは、「いたします」「です」に言い換えましょう。
【Before】
会議資料は当日、各自の席へ配布させていただきます。
通常の会議では、資料配布についての許可は不要であり、配布者が特別な恩恵を受けることもありません。
よって、以下のように「いたします」と書き換えます。
【After】
会議資料は当日、各自の席へ配布いたします。
【誤用例1】
相手の許可が必要ではないのに「させていただく」を使ってしまうケース
「させていただく」が使える1つめの条件は「相手又は第三者の許可を受ける必要があるとき」です。
そのため、以下の例文のように、誰の許可も必要ない場面で「させていただく」を使うことは誤用です。
【Before】
私は今年の3月に○○大学を卒業させていただきました。
大学を卒業するには、規定の単位を取得するなどの一定ルールがありますが、それは「誰かにお願いして許可してもらう」という性質のものではありません。
そのため「させていただく」と書くことで、特別な許可(配慮)を受けたようなニュアンスにもなってしまうので、不適切です。
正しくは、謙譲語「いたします」または、シンプルな丁寧語を使って、以下のように書きましょう。
【After】
1.私は今年の3月に○○大学を卒業いたしました。
2.私は今年の3月に○○大学を卒業しました。
つづいて、以下の表現も誤用です。
【Before】
皆様の息の合ったすばらしい音色に、心から感動させていただきました。
感動・喜び・悲しみといった感情や心の動きは、誰の許可も必要ないからです。
こちらも、謙譲語「いたしました」または、丁寧語「しました」を使いましょう。
【After】
1.皆様の息の合ったすばらしい音色に、心から感動いたしました。
2.皆様の息の合ったすばらしい音色に、心から感動しました。
【誤用例2】
自分が恩恵を受ける内容ではないのに「させていただく」を使ってしまうケース
「させていただく」が使える2つめの条件は「そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのあるとき」です。
そのため、以下の例文のように、自分が恩恵を受けることのない場面で「させていただく」を使うことは誤用です。
【Before】
本日の定例会でご要望のあった店舗別売上集計を、添付ファイルにて提出させていただきます。
書き手は指示通りの対応をおこなっただけであり、特別な恩恵を受けていないため、「させていただく」の使用条件に当てはまりません。
以下のように、謙譲語の「いたします」を使うほうが適切です。
【After】
本日の定例会でご要望のあった店舗別売上集計を、添付ファイルにて提出いたします。
ただし、前後の文脈や状況によっては、「させていただく」の使用が適切な場合もあります。
たとえば、当初は持参する予定だったのに、上司から「メールの提出でいいよ」と連絡があったような場合は「させていただく」を使用しても問題ありません。
書き手は「足を運ぶ必要がなくなった」という恩恵を受けているので、「(お言葉に甘えて)添付ファイルで提出させていただきます」と表現するのは許容できる使い方といえます。
3.不必要に「させていただく」を使うと失礼な印象になる場合も
ビジネスメールや文書を書くときに「させていただく」を多用すると、敬語が過剰に感じられたり、慇懃無礼(※)だと受け取られたりするおそれもあります。
※慇懃無礼(いんぎんぶれい):丁寧すぎて、かえって失礼になること
1.敬語の使用が過剰だと受け取られる
以下の、資料室管理者へのお礼メールを見てみましょう。
【Before】
時間外に特別に資料を貸し出していただきありがとうございます。
さっそく拝見させていただきます。
この場合、特別に便宜を図ってもらったことが文章から読み取れますので、許可をもらい、恩恵を受けるといった「させていただく」を使う条件には当てはまっています。
しかし、「見る」の謙譲語である「拝見」と、同じく謙譲語の「させていただく」を連続して使用しているため、読む人にとっては敬語が過剰に感じられてしまいます。
このようなときは、以下のように言い換えるとすっきりします。
【After】
1.時間外に特別に資料を貸し出していただきありがとうございます。
さっそく拝見します。
2.時間外に特別に資料を貸し出していただきありがとうございます。
さっそく見せていただきます。
2.自分の意向を優先するニュアンスになる
また、人によっては、部下や目下の相手から「させていただく」と言われると不快に感じることがあります。
たとえば、以下の例文を見てどのように感じるでしょうか。
【例】社内のやりとり(上司から部下へ)
11時からの会議、午後の予定が詰まっているから先に始めさせていただくよ。
目上の人が目下の人へ「先に始めさせていただくよ」といった言い方をするように、「させていただく」には、相手の都合よりも、自分の意向や利益を優先するというニュアンスがあるからです。
そのため、以下のような使い方は、謙譲語「させていただく」を使っているにもかかわらず、一方的な印象で不躾だと感じる人もいるでしょう。
【Before】
明日は貴部署の会議が14時に終了とのことですので、14時15分頃に集金に行かせていただきます。
より好まれる言い換え例としては次のようなものがあります。
【After】
1.14時15分頃に集金に伺います。
2.14時15分頃に集金に参ります。
とりあえず「させていただく」を使っておけば丁寧になるだろうという意識で多用すると、失礼な印象を与えてしまう場合があります。
メールを送信する前に、「させていただく」の使い方は適切か考えて、見直してみましょう。
まとめ
今回は、意外と使い方が難しい敬語表現「させていただく」について取り上げました。
「させていただく」の使用が適切な場面は以下の2つです。
- 相手側又は第三者の許可を受けて行う場合
- そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合
「させていただく」と書いたときには、この行為は「許可」「恩恵」のどちらか、あるいは両方に当てはまっているか?という視点で見直しましょう。
丁寧な言い回しのつもりでうっかり誤用してしまわないよう気をつけましょう。
今回ご紹介した用法を指針として、ビジネスシーンの正しい文書作成にいかしていただければ幸いです。
文賢マガジンでは、これからも文章作成に関する記事を発信していきます。
次回以降の記事もお楽しみに。
ちなみに、文章作成アドバイスツール「文賢」を使うと、「させていただく」を使っている箇所を自動でサクッと確認できます。
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